刈谷市は豊田市に次ぎ、自動車産業を中心とした町です。
この茶室もそうした地域の人々一般にお茶を楽しんでいただくための施設として、また、より高い文化的価値観を求めて建設されました。
この敷地には、同時に美術館棟も移設され、より一層、市民の人びとに活用されやすい場所となっています。
茶の湯にはいろいろな流派があり、今回の茶室もその点が最も問題とされたところであったと思います。
そのため、広間は別として小間では四畳半の全くオーソドックスな空間とし、貴人口、そしてにじり口を設け、洞庫まで設けて、だれにでもわかり易い茶室としました。
茶室の一角に広い芝の植込みがあり、ここで野点ができるようになっているため、水屋から四畳半の茶室に入るところに水上口を設け、野点で使いやすいようになっています。
日曜になるとご婦人たちがここで茶の湯を楽しんでおられる光景をときおり目にします。
老若男女がこうした茶の湯を楽しみ、心の洗濯をする場所であってほしいと思うし、そのための茶の湯であってほしいと願っています
住宅建築1989年8月号掲載
撮影:相原 功