知多半島の中央に位置する半田市は明治時代より、県下でも早くから文化経済が発展した所である。その文化は現在でも大きく影響を受け、この茶室の建主もまた、地域に根ざす継承者として奉仕されている方です。
迎賓の意を含めたこの茶室は、建主の好みで煎茶席とすることになりました。
今回建築する茶室は、もともとあった材料の中から、桧、北山丸太、秋田杉等豊富に選ぶことができました。
職人たちについて、工期や予算を含め京都からお願いすることを考え進めていましたが、設計者と建主の合意により地域の職人たちにうでをふるってもらう事になり、地元の宮大工の筋に依頼しました。
後述のまとめに書いているように“かた”の話ではありませんが、やはり角物を使い慣れている大工が丸物を使いこなすには、少し手間がかかってしまったような気がします。宮大工は、その職人技として独特な“かた”を持っています。構造上及び意匠上の点からでも、太くてがっちりした組み方を用いています。
しかし茶室は侘びの概念から考えても、できるだけ自然の部分、たとえば曲がったものであれば、その部分に美意識を思い洒落て使いこなします。
細い場合は可能な限りその細さに挑戦します。今回どこまで理解して頂けるか心配でしたたが、幸い宮大工でありながら大変深い理解と数寄心をもち、この普請に努力して下さりました。われわれは今後も、この様に何事にも興味を示し発展的な職人集団のセンスを期待し、新しい“かた”を表現してほしいと願っています。
住宅建築1995年5号掲載
撮影:相原 功