数寄屋は贅をつくす造りの中にも侘び、さびを裏に秘めた“かたち”です。
しかしながら現代では職人や材料、コストを含め、どこまで徹底することができるのだろう?
このプロジェクトは、そうした難問があるなかで“一般注文住宅として数寄の考え方を取り入れていく住まいを”という、建主である住宅メーカーの深い理解のもとに開発したモデル住宅です。
伝統的書院風数寄やの様式を基本にもつため、ぎりぎりまでコストを抑えるものの、限りなく本物の材料を使う考え方をとりました。
構造では梁桁などは国内産の唐松を用いた集成材を使用し、力強い耐力によってねじれを防ぎました。
また瓦屋根では、メーカーとの共同開発により、この住宅のためのオリジナル瓦をデザインしました。
住宅で問題になるのはメンテナンスです。今回の場合は工夫して、メンテナンスに手間がかからないよう配慮しました。例えば水切、樋などは全て銅加工したものを用い、設備は取り外し交換しやすい構造としました。
内部造作は天井板を除き全てムク材を用い、木材の良さを強調しました。このような設計にすると通常はかなりコストがかかってしまいますが、材料の入手方法、使い方、納め方により、予想を上回るローコスト化が計れたと感じています。
この開発では、より優れた職人集団の“意気込み”によってレベルの高いものができあがったと思います。
その集団が今後生き残り、彼らの“かた”を絶やさないためにも、数ある住宅メーカーが、彼らを守って、感性の優れた住まいを提案し、より日本的な町並みづくりに貢献してくれることを信じています。
住宅建築1995年5号掲載
撮影:相原 功