国際交流としての茶の湯空間
この建築は「愛・地球博」の開催に因み、国際交流の場とし、また愛知における青少年の日本文化育成の場とした公共の日本建築であり、茶の湯の空間です。
元来日本建築は約束事が多く、しきたりや格式の中でがんじがらめになっている空間でもあります。
歴史深い茶の湯は特に武家や町民文化の中で多くの格式を築き、また多くの約束事と共に伝承され今日に至っています。
これらの約束事や格式は日本の建築家たちにもやがて特殊な建築として扱われこれを設計する者は数ある中の一部でしかありません。
これからの日本は我々日本人達が持つ美意識の中で伝統を守りながらも新しい日本の”かたち”を築くことにあるのではないでしょうか。
そのためにもこの国際博覧会の場であえて難しい格式等をそぎ落とし、親しみやすく理解されやすい日本建築や茶の湯空間を表現することが肝要です。
このことについて、茶道界をはじめ職人に至るまで、多くの理解や努力を頂き、公共的な日本建築としては今までにない表現が可能となりました。
また、博覧会のテーマでもある”自然の叡智を縦軸に地球大交流を横軸にし幅広い参加と交流を”求めることに共通しています。
世界の中の日本文化として茶の湯は”こころ”の作法として大変注目を集めています。
日本の未来の青少年にその叡智を託すなら、例えば格式は”心の中に存在する日本文化”であってほしいものです。
そこでこの建築では、思いを内に秘めながら、表現の簡素化とユニバーサルなデザインにあえて挑み、少なからず満たす条件を6つ揚げ設計に挑みました。
1.外観は簡素で庶民的な佇まいとすること
2.茶の湯の”にじる”を表現すること
3.仕上げ等材料により格式を表現しない
4.作法が判りやすい動線計画とすること
5.伝統的技術を表現できるようにすること
6.空間に威厳を感じさせない意匠とすること
2005年3月「愛・地球博」が開催され、日本中から各流派合同による平成の大茶会が開かれました。
世界中、日本中の人々に空間の表現に、内に秘めたこころを感じて頂ければ幸いです。
撮影:相原功